治療の前に

Before treatment

院長インタビュー

Interview

松平 淳

「デメリット」まで理解したうえで、
治療に臨んでいただきたい

歯を失ってしまった際の治療として、インプラント埋入治療はとても魅力的なメリットがあります。しかし、そのメリットばかりに目が行きがちで、デメリットを理解せず治療に臨まれる方が少なくありません。

そのため、患者さまには、事前のご説明・カウンセリングでデメリットについても詳しくお伝えしています。そして、メンテナンスの重要性もお伝えするので、理解・納得していただいたうえで治療を受けていただきたいと思います。

これまでに「治療が難しい」と判断された方でも治療できる可能性がありますので、まずはご相談ください。充分に診査・診断を行なったうえで治療を進めていきます。

松平先生はインプラント埋入治療を得意とされていますが、なぜ力を入れて学ばれたのでしょうか?

私は大学病院に残って歯科口腔外科について深く学び、日本口腔外科学会口腔外科専門医の資格を取得しました。その資格を充分にいかせる治療として、インプラント埋入治療に力を入れています。

インプラント埋入治療は外科的手術療法をともないます。外科処置に必要な知識を充分に培っていることはもちろん、治療のためのトレーニングも多く積んできました。手術だけでなく、骨造成などに関する研鑽も充分に行なってきましたので、患者さまの症状に適した治療法をご提供することも可能です。

もちろん、すべての方にインプラントが適しているというわけではありません。その判断をするために必要な知識も有しています。当院は医科と連携しながら行なっていますので、きちんと診査・診断をしたうえでより良い治療法をご提案します。

インプラント埋入治療は診査・診断が重要になると思いますが、その過程でインプラント埋入治療を行なわないと診断される場合もあるのでしょうか?

松平 淳

お口の状態によってできない場合はもちろん、患者さまのメンタル面なども考慮して治療をしないと判断することがあります。インプラント埋入治療は、あくまでもお口の機能を取り戻すリハビリテーションの一環だと考えています。そのため、ただインプラントを入れて終わりではなく、その後も医療従事者と患者さまが協力していくことが大切です。

当院では、治療を希望される方のお口の確認だけでなく、医科と連携してメディカルチェックやメンタルチェックまで事前に行ないます。その方に関する情報を多く収集したうえで、本当にインプラント埋入治療が何よりも良い選択肢なのかを判断していきます。場合によっては、義歯のほうがその方に適していることもあるので、診査・診断をとても重視しています。

メディカルチェックのお話が出てきましたが、医科歯科連携について詳しく教えてください。

歯科の分野から医科歯科連携のメリットを考えると、インプラント手術前のメディカルチェックや手術時の静脈内鎮静にともなうリスクを回避できるということがあります。歯科口腔外科分野の疾患における診断・治療につながる血液検査、抗生剤や栄養などの点滴もスムーズに実施することが可能です。

また、医科の分野からしても、抗がん剤や放射線治療による口内炎の改善や予防、さらに脳卒中における摂食嚥下障害に対する作用など、多くの面で連携することのメリットがあります。

インプラント治療を検討されている方に知ってほしいことはありますか?

松平 淳

インプラント治療は「きちんと噛めるようになる」「自然な見た目に仕上がる」など、メリットが注目されがちです。しかし、患者さまにはデメリットについてこそ、充分に理解していただきたいと思います。

例えば、一度手術をすればその状態をいつまでも維持できるとお考えの方がいらっしゃいますが、メンテナンスを怠ると逆にお口の環境を損なってしまいます。周辺の歯肉が炎症を起こしてしまうインプラント周囲炎を発症させると、インプラントが抜け落ちるだけでなく、痛みもともないかねません。

そのため患者さまには、事前のカウンセリングでデメリットとメンテナンスの重要性について時間をかけてご説明するようにしました。もし内容を理解していただけない場合には、治療をお断りさせていただくこともあります。デメリットに関しても充分に理解・納得したうえで、治療に臨んでいただきたいと考えています。

先生が考える「歯」とは?

あくまでもインプラントは人工物ですので、生まれ持った天然の歯には勝てません。とくに、噛み心地という点で天然の歯に劣ってしまいます。天然歯の場合、歯根膜という噛み心地を司る膜がありますが、インプラントにはそれがありません。そのため、天然歯のような噛み心地を再現することはできません。

歯を失ってしまった場合の治療としてインプラントはとても魅力的ですが、まずはご自身の歯を維持することに取り組んでいただきたいと思います。それでも歯を失ってしまった際には、患者さまの生活の質を高めるためにも、インプラント埋入治療でサポートしていきたいと考えています。

インプラント埋入治療についてよく知ってください

Please know

インプラント埋入治療についてよく知ってください

外科手術をともなうインプラント埋入治療には、メリットがある一方でさまざまなリスクもあります。良い点と悪い点の両方をよく知っていただくことで理解が深まり、治療を受けるべきか適切に判断できるようになります。

インプラントのメリット

インプラント埋入治療は、入れ歯やブリッジとは異なる特徴があります。見た目が美しくなるだけでなく、噛むことを含めた機能面や全身の健康面にもメリットがあります。

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    よく噛める

    インプラントの噛む力は、天然の歯と同じです。硬い食べ物も何の問題もなく噛めます。

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    天然歯を守る

    インプラントはそれ自身がよく仕事(噛むという仕事)をするので、周りの歯の負担を大幅に減らします。そのため、天然歯を守ることになります(ブリッジの場合は両隣の歯に負担がかかります)。

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    ブリッジのように、両サイドの歯を削る必要がない

    インプラントの大きなメリットは、ブリッジのように両サイドの歯を削る必要がないということで、インプラントの両隣の歯を痛めることなく治療できます。歯を削らないで済むということは、歯の寿命が大幅に伸びることを意味します。このメリットはとても大きいです。

    ブリッジのように、両サイドの歯を削る必要がない
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    入れ歯のように、バネがかかった歯が傷まない

    入れ歯をすると、それを支えるために天然の歯にバネを引っ掛けます。バネのかかった歯は数年で使えなくなり、抜かなくてはいけなくなることが多いです。それを繰り返しているとどんどん自分の歯が減っていき、総入れ歯に近づきます。インプラントはこの流れを断ち切ります。

    入れ歯のように、バネがかかった歯が傷まない
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    取り外しの入れ歯のようなわずらわしさがない

    取り外しの入れ歯は手入れが煩雑で違和感もあり、噛む力もあまり出ません。インプラントはご自身の歯と同じような感覚で噛め、わずらわしさがありません。

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    噛むことで脳細胞を刺激する

    よく噛むことは脳に明らかな刺激を与え、思考力が増し、脳細胞の活性化につながることが医学的に証明されています。また、ラットの実験ではよく噛むラットの方がストレスに対する抵抗性も強いことがわかっています。

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    精神的に満足度が高い

    入れ歯を入れること自体が嫌だとおっしゃる方はたくさんおられます。入れ歯を入れることにより老けた感じがしたり、自分自身が老いてゆくようなイメージをもったりするようです。インプラントはもう一度永久歯が生えてくるのと似ているので、そのイメージの逆であるといえます。

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    エイジング対策

    インプラントはチタンからできています。チタンは体の中で活性水素を発生させ、老化を促進させる活性酸素から守ります。また、よく噛めることにより唾液中のパロチンという若返りホルモンも多く分泌させます。さらに、精神的に良い状態になるので脳に良い感覚を与え、心身ともに若返ります。

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    笑顔が増える

    食事をすることが楽しくなり、ご家族やご友人との会話が楽しくなります。毎日の生活にも活気が出て、人生が楽しく前向きになります。

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    長生きにつながる

    精神的に良い状態になり笑顔が増えるので、NK細胞が活性化されます。NK細胞はでき始めのがん細胞をやっつけます。また、病気にもかかりにくくなり、長生きにつながります。「病は気から」は、医学的にエビデンスをもって証明されています。

さらに、インプラントには、ほかの側面から見ても良い面がたくさんあります。それらをご説明します。

機能面
インプラントは、もう一度ご自身の歯が生えてくるのと似ているので非常によく噛めます。硬いものも噛めますし、入れ歯のように取り外す面倒さもありません。
精神面
インプラントを入れることにより、よく噛めるようになって食事が楽しくなります。とくに、ご家族やご友人との食事中に会話が弾み、人生そのものも楽しくなります。また「入れ歯を入れること自体が嫌」「老けたと感じられる」と考える方にとっては、インプラントが精神的にも大きくプラスになります。
健康面
インプラントにすると、よく噛めるようになります。よく噛めることが全身の健康に大きく貢献します。
具体的にご説明すると、まず脳細胞を活性化させます。噛む刺激は、明らかに脳細胞に良い刺激を与えます。脳の老化の防止はもちろん、頭の回転の良さにもつながります。
次に、よく噛むことにより、唾液が多く出ます。唾液はたくさんのパワーをもっています。まず、食物を唾液と混ぜることにより、消化能力が上がります。また、発がん物質などを解毒します。さらに、虫歯菌をやっつけたり、食後に酸性になったお口の中を中性に戻したりする役目もあったりします。唾液の中にはパロチンという若返りのホルモンも含まれているので、若返りにも役に立ちます。
さらに、噛む力が強い人の方が足腰も強いという点が挙げられます。これは、スポーツ医学でも証明されています。
また、インプラントを含めて歯の数が多い人の方が平均寿命が長くなります。大学の疫学調査でも明らかになっています。

インプラントの欠点

さまざまなメリットがあるインプラント埋入治療ですが、一方でデメリットがあることも否定できません。治療後の生活に関連する項目もあるので、よくご検討ください。

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    外科手術であるゆえのリスク

    何といっても、手術をしなければならないことはもっとも大きな欠点といえます。ほかの方法では歯を扱うだけですが、手術をすれば顎の歯肉ばかりか骨にも手をつけなければなりません。すると、今までは隠れていて問題がなかった神経や血管、鼻、目などに障害を起こす危険が生まれたり、歯肉を開いて骨を削れば、腫れや出血、細菌などが全身に感染して合併症が出たりしてしまう危険もあります。

    外科手術であるゆえのリスク
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    全身疾患があると手術ができない

    インプラントを希望されても、治療を行なえない患者さまがいます。インプラント埋入治療は外科手術なので、糖尿病や肝炎、心臓に問題を抱えている方や、喘息や高血圧、妊娠している方などのように手術に危険がともなうと判断される場合、インプラント埋入治療ができないことがあります。これらの病気はインプラント埋入治療だけに限らず、ほかの治療をする際にも必要な情報となります。

    全身疾患があると手術ができない
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    長い期間がかかる

    ほかの治療法に比べて期間が長くかかります。インプラントが骨にくっつくまで、早くても6週間は待たなければなりません。顎骨の状態が悪いと、さらに3ヵ月間待たなくてはならないときもあります。さらに、歯の抜けた状態が悪いときには、始めるまでに何ヵ月も待ったり、顎骨を強化する治療を済ませてからでないと、インプラント治療を始めることさえできなかったりする場合もあります。例えば、入れ歯なら早いと1週間くらいでできます。ブリッジでも早ければ10日くらいとなります。こういった従来の方法と比べ、期間がとてもかかることは欠点といえます。

    長い期間がかかる
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    お金がかかる

    インプラント埋入治療の価格は、ほかの方法に比べて低くはありません。入れ歯やブリッジであれば健康保険で行なうこともできるので、その場合は価格が低くなります。

    お金がかかる
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    歯根膜がない

    歯根膜は、触覚、痛覚、温覚、圧覚などを感知して強く噛みすぎるのを防ぎます。しかし、人工歯根には歯根膜の機能はついていないので、強く噛みすぎるということが起きる可能性があります。また、自分の歯に比べると噛んだときの感じが違います。さらに、人工歯根の周囲が細菌感染をしても、血液供給が少ないため炎症に対する防御が弱くなります。歯根膜がないことによるトラブルは、多く見られます。

    歯根膜がない
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    メンテナンスし続けなければならない

    インプラントには歯根膜がなく、血液供給が天然歯より少ないために感染防御機構が弱くなります。そのため、治療後のメンテナンスが絶対に必要です。メンテナンスに問題があるような方は、インプラント埋入治療は避けた方が良いでしょう。

    メンテナンスし続けなければならない
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    金属アレルギーの可能性がある

    インプラント埋入治療に使用させる材質は、現在、純チタンかチタン合金が主流となっています。これらの材質は医科の手術でも一般的に使用されており、生体との親和性が高いため、チタンによるアレルギーはほとんどないといわれています。また、現時点の臨床結果では安全性が高いとされています。しかし、人体にとっては異物であるため、場合によってはアレルギー反応を示す人もいます。その場合には、当然のことながら治療を受けられません。

    金属アレルギーの可能性がある
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    治療が複雑になる

    歯の形だけではなく歯根から作れるので、自由度が高くなります。しかし、それと同時に治療がとても複雑になります。診断と計画を入念に練り上げ、治療も細心の注意を払ってより正確に行なわなければなりません。当然、衛生的な環境で清潔に行ないます。

    治療が複雑になる
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    インプラントの隣の歯が使えなくなったら、またインプラントを埋入する

    インプラントの隣の歯が抜歯になってしまうと、そこにはインプラントを埋入するしか選択肢がありません。なぜなら、インプラントと天然歯を連結することは基本的にはできないからです。また、インプラントは側方力に弱いため、入れ歯の留め金をインプラントにかけることは危険です。インプラント治療後の隣在歯の再治療はインプラント埋入治療しかないことが、インプラントの最大の欠点かもしれません。

    インプラントの隣の歯が使えなくなったら、またインプラントを埋入する
インプラント埋入治療にともなう一般的なリスク・副作用
  • 機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
  • インプラントの埋入にともない、外科手術が必要となります。
  • 高血圧症、心臓疾患、喘息、糖尿病、骨粗しょう症、腎臓や肝臓の機能障害などがある方は、治療を受けられないことがあります。
  • 手術後、痛みや腫れが現れることがありますが、ほとんどの場合1週間ほどで治ります。
  • 手術後、歯肉・舌・唇・頬の感覚が一時的に麻痺することがあります。また、顎・鼻腔・上顎洞(鼻腔の両側の空洞)の炎症、疼痛、組織治癒の遅延、顔面部の内出血が現れることがあります。
  • 手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気などの副作用が現れることがあります。
  • 手術後、喫煙や飲酒をすると治療の妨げとなるので、1週間は控えてください。
  • インプラントの耐用年数は、口腔内の環境(骨・歯肉の状態、噛み合わせ、歯磨きの技術、メンテナンスの受診頻度、喫煙の有無など)により異なります。
  • 毎日の清掃が不十分だった場合、インプラント周囲炎(歯肉の腫れや骨吸収など)を引き起こすことがあります。
日本口腔外科学会口腔外科専門医について

公益社団法人 日本口腔外科学会」は、口腔外科学の専門的知識と経験を有する歯科医師に対して、「口腔外科専門医」の資格を与えています。

「日本口腔外科学会口腔外科専門医」資格取得の条件
  • 日本国の歯科医師または医師免許証を有し、良識ある人格を有している。
  • 歯科医師または医師免許登録後、6年以上継続して同学会会員である。
  • 「口腔外科認定医」である。
  • 歯科医師または医師免許登録後、同学会の定める研修カリキュラムに従い、研修施設または准研修施設において、通算6年以上、口腔外科に関する診療に従事している。

など

「日本口腔外科学会口腔外科専門医」資格保持の条件
  • 5年ごとに資格の更新をする。

など
詳しくは、「公益社団法人 日本口腔外科学会専門医制度規則」をご覧ください。